スリランカ通信(10) 「スリランカ人魂」
今年の1月、スリランカ政府とLTTEの間の休戦協定が破棄されてから、テロの頻度が激増した。一週間に一回はどこかで、バスや電車の中で爆発が起きたり、爆弾の小包が発見されたり、自爆テロが起きたりしている。子供を外国に住まわせるべきかどうか、真剣に悩んでいる親も多いという。
一方、石油価格の高騰(*)から、バス代等生活費が値上がりしているものの、経済成長が続いている。紅茶やゴムの高収益などがこれを支えているのだろうか。観光産業の危機が叫ばれながらも、外国からの投資が続けられているし、イギリスなどからの旅行者の数も減ってはいないそうである。
戦争はあるが経済は成長している。世界のどこに、こんな悲惨な闘争の中で、平均5%の経済成長を果たしている国があるだろうか。ショッピング・モールはとりあえず充実しており、マレーシアやインドの投資家は引き続き投資しており、株式市場は活発だ。
スリランカの中・上流階級。確かに生活費のコスト高に不満を持ちながらも、パックツアーでバンコクやシンガポールに旅行するという。そこには高い費用に対する不安も疑念もない。週末はリゾートホテルで過ごす彼らに生活費を切り詰めている様子はない。それよりもステータスを守ることのほうが大事なようだ。
労働者階級にとっても、物価の高騰は彼らを生活苦に追いやっているはずだ。ところが、雇用条件が劣悪な彼らは、借金をしてでも携帯電話を買ったり、派手な洋服を買ったりしようとする意欲をもっているそうである。
自爆テロの危険、通勤時のバスや電車の中の不安、ショッピング・モールでの爆発の恐怖。にもかかわらず、スリランカ人は前に進む。迷いながらも悩みながらも、前に…。あるいは「進む」しかないのかもしれない。
生活費があがり、不満を言いながらも何とか工夫する。それについて何か試みる。あちこちで爆発が起きても、その瞬間、ショックを受けても、その後でパーティへ向かう。これを「スリランカ人魂」と呼んでいいだろう。「とりあえず前に進む」この姿勢こそが外国人旅行者を引き付けているものの源なのかもしれない。投資家が投資の最善の場所として信じている理由なのかもしれない。
(*)最近、スリランカ政府は石油消費を削減するための方策として、学校をこれまでの週5日制から4日制の登校日にしようという「病的な」提案を出して、人々の苦笑を買った。確かにコロンボ市内の登下校時の渋滞振りは目に余るものがあるが、なんとも稚拙な策であることに気がつかない政府に大きな問題があること、そうした政府を抱えていることもスリランカ人の悲劇の一つであろう。
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